The Story ofMichinoku Gold

陸前高田市

時の権力者たちを魅了してきた伝説の黄金の山

- Off the beaten path - 知られざる黄金伝説を訪ねる陸前高田の冒険譚

岩手県陸前高田市は、「陸中」ではなく「陸前」の名が入っていることから分かる通り、元々は仙台藩領の一部で、その「辺境」に当たる。陸前高田の金にまつわるスポットも、人里離れた玉山金山の周辺に広がっている。それらを周った率直な感想は、この地は私たちの探求心をくすぐるような、まるで「冒険の地」ということだ。まだ多くの人には知られていない、こんなワクワクするようなエリアが残っていた。

玉山金山中腹の湯治温泉「玉乃湯」から5分ほど登ったところにある「千人抗跡」。その名の通り一度に千人が金の採掘をしたとなると、たとえ実際のその数が半分だったとしても、当時としては相当な作業員数ではないか。車もないような昔では、この地に食料を運ぶのも容易ではなかっただろう。それだけの人数が、この標高874mの山の中に逗留していたほど、ここにはその価値があったということになる。

「千人抗」の名は、鉱夫千人が犠牲となった落盤事故と、唯一生き残った「飯炊き女のオソトキ」伝説が由来だという。「信心深い『オソトキ』だけが生き残る」というという、教訓を含んだ物語の構成と結末は日本の昔話では定番だが、大体そういった伝説の裏には時の支配者の野望があるに違いない、と想像をたくましくする。実際、豊臣秀吉がわざわざ直轄にして、その後も伊達政宗が金山を管理し、イタリアに派遣した慶長遣欧使節の費用を賄ったとすらいわれているほど。江戸時代が終わって明治に至っても金の産出があったようで、この山自体が日露戦争の軍資金の借入金の担保となった、との記録もあるそうだ。

Tamayama Shrine千人抗跡を越えてさらに10分ほど登ると、目の前に階段の参道が現れる。見上げると鳥居を発見。これが噂の「玉山神社」に違いない。文字通り「遺跡」の中を探検する冒険者のように、落ち葉で埋もれつつある階段を登っていく。

登りきると、周辺の森とは異質なやや広い空間が目の前に広がる。静かに鎮座する鳥居と小さな社殿の前で、想像を働かせる。かつてこの辺りには、金採掘のための多くの人々の喧騒があったはずだ。今やここには燃え立つばかりの紅葉の景色に、風の音が山々に潮騒のような音を立てて響くのみである。「兵どもが夢の跡」は松尾芭蕉の平泉での句だが、この人里離れた山の頂に、屈強な別の「つわものども」が黄金を求めていたのだと想像する。

いや、ただ金を求めていただけだろうか?海でも平地でもない、この神々しい天上の世界での採掘。古代人が残した様々な痕跡。もしかして昔の人にとってこの地の金の採掘は、単なる「商い」の一環だけではなく、山岳宗教のような信仰の一つだったのかもしれないな、などと想像するほど、この山はどこか神々しい。

玉山神社の前の分かれ道を別に進むと、いよいよ今回のメインイベント「氷上山の水晶採り」の現場にすぐ到着。一見すると「ただのガレ場」か?と思って地面に顔を近づけると、早速ところどころ光っているではないか。「え?こんなに簡単に見つかるの?」というほど、すぐに小さな小さな水晶を発見。これには今回同行したアメリカ、中国、台湾、タイのライターさんたちも大興奮。最初はみな嬉々として楽しそうに山を探し回るが、やがて皆しゃべりもせず黙々と周辺を探し始める。

これが何とも面白い。

もしかして、鉱物を探すのは人間の本能なのではないか?と思うほど、みんな真剣に集中している。探し当てた水晶は、お土産に持ち帰ることができる。「発掘ツアー」は要予約で事前に申し込みが必要だが、是非とも体験したい。

一通り山野を巡って水晶の発掘を終え、その後に玉乃湯の温泉で疲れを癒すのもよいだろう。おすすめは「金箔アイス」。他の観光地にもある、金粉がフリカケられているものではなく、本当に巨大な金箔が載せられている。同行した中国人ライターさんが早速チャレンジ。「味は?」と聞くと「金の味!」という。金の味って、どんなだろう?

陸前高田の「食」といえば、東日本大震災後に新たに「開発」された「ホタワカ御膳」がお勧めだ。正式名称は「陸前高田ホタテとワカメの炙りしゃぶしゃぶ御膳」。その「開発史」は、現在の「高田大隅つどいの丘商店街」をはじめ地元の飲食店関係者の苦闘の歴史が込められている。2011年に発生した東日本大震災をきっかけに、「新しい陸前高田の名物料理を作りたい」と、首都圏の専門家などのアドバイスを受けながら地元の飲食店メンバーなどが共同で開発。現在は市内のホテルや飲食店などで提供されている。とりわけ「ワカメのしゃぶしゃぶ」は、三陸地方では家庭料理になるほど定番だが、他の地域では滅多に食べられない。地元では当たり前だと思っていても、外からの目線で初めてそのよさに気づくことは多い。あの未曽有の大災害を乗り越える中で、新しい取り組みにチャレンジする「強さ」を、この絶品の料理は伝えている。

陸前高田は、いわゆる「観光地」ではないかもしれない。しかし、玉山を中心に散りばめられた様々な「歴史の紐解き」は、「冒険者」にとって珠玉のもの。そういったエリアは「Off the beaten path」といって、まだ観光客がほとんど踏み入れていない場所として、日本を訪れる外国人の旅人の好むところだ。

インターネット時代のこの世の中に、もう冒険する場所などないのではないか?

いや、一見すると何もないように見えるこの場所に、自分の足で廻ることで様々な昔の痕跡を発見し、今自分が冒険中だと確信できる。伝説を求める冒険好き・探検好きの旅人は、是非とも訪れたい。


Location陸前高田市

Writer
笠間建
宮城県仙台市生まれ。株式会社communa所属。ライター/マーケッター。今回のプロジェクトでは、全てのTravelogueを担当。趣味は写真撮影。

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